香港での経験 岩本吉隆

 

皆さま、こんにちは。本日は私が今年3月に香港で行ったレクチャーの経験について、思い出とともにお話しさせていただきます。

昨年9月、香港浸会大学の准教授を務めるルーマニア人の友人、Raduから「香港の大学でレクチャーをしてみないか」という話をいただきました。彼は私がロンドンにいた頃の大切な友人で、日本文化史を研究しています。今回の誘いは私にとって非常に嬉しく、また大きな挑戦でもありました。

約半年間、AIツールのTomeとGammaを活用して準備を行いました。昔、制作した作品をまとめる作業はとても懐かしく、AI技術の進歩によりプレゼン資料の作成はとても捗りました。特に、Gammaはお勧めです。

幸運にも徳島から香港への直行便があり、Greater Bay Airlinesを利用し快適な旅を楽しむことが出来ました。ホテルには5日間滞在しましたが、設備やWi-Fiも整っていて、日本のビジネスホテルと遜色なく快適でした。

香港に到着してまず感じたのは、その街並みの雑多さと不思議な秩序です。建築工事の足場に竹が使われていることや信号のデザインの面白さに目を奪われました。日本と違う風景を見るのは久しぶりでした。古く雑多な住宅が並び、危険な雰囲気もありそうですが、実際には安全で、色々なお店に入りましたが、人々も親切でした。

レクチャーは当初予定していた45分間の講義と質疑応答を含め約90分、全て英語で行いました。内容は私の作家活動についてですが、作家の紹介やレジデンスの紹介も目的としています。質疑応答の際にはRaduが質問を促してくれ、学生たちの活発な参加によりとても楽しいものとなりました。授業後、全員で記念撮影を行い、学生たちの明るく可愛らしい笑顔が印象的でした。インストラクターとして貴重な経験になりました。

レクチャー前日には音楽学部も訪問しました。そこには多数のグランドピアノが置かれ、プライベートスタジオも整備されていました。生徒や職員とお話しする機会がありました。英語のレベルはまちまちでしたが、総じて日本人学生より高い印象で、大学での授業も英語で行われています。大学内ではガラス学部やRaduの研究室を見学させて頂きました。学生たちはフレンドリーで、日本のアニメ好きも多く、日本のアニメ文化の世界的影響を改めて感じました。中でも、「本当の夢が叶うとしたら?」という問いをテーマにしたプロジェクトに取り組む学生との交流できたことは、私自身にとっても非常に刺激的でした。

Raduと大学周辺や九龍地区を散策しましたが、現代的な商業ビルが立ち並ぶ活気ある中心地やベイエイリアなど、多様な香港の一面を楽しみました。Raduとは、昔撮った写真と同じポーズで写真を撮り、それは私にとって宝物の一枚となりました。まさか香港で再会できるとは思ってもいませんでした。

偶然、香港で開催されたアートバーゼルにも足を運びました。ピカソやクリムトの作品から若手作家まで多彩な展示があり、特に香港独自のプリミティブなアートトレンドが興味深かったです。AIを使った作品はまだ珍しく、香港のアート市場における新しい可能性を感じました。

Boredomというミュージシャンのライブイベントにも足を運びました。香港で日本の音楽家の演奏を鑑賞することも刺激的な経験でした。黒いネットに映像を投影する演出や実験的な音楽が独特の世界観を作り出しています。会場周辺の中国的な雰囲気を醸し出す夜の街並みも非常に印象的で、ロンドン時代のよく通ったカフェ「プレット」で再び食事できたことも嬉しい偶然の出来事でした。香港にはその歴史からイギリスと縁のある店が多くあります。

香港滞在中には日本のことや自分自身の生活について考える時間もありました。外国へ行くと日本や自分を客観的に見る機会を得ます。

素晴らしい経験をさせてくれた友人Raduに心から感謝しています。香港で過ごした忘れ難い時間は、私の人生にとってかけがえのない宝物となりました。次は、私が彼を日本に呼ぶ番です。

 

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